Valþjófsstaður door (ヴォプナフィヨルズル ドア)
Valþjófsstaður door(ヴォプナフィヨルズル ドア)というのはアイスランドの初期に作られたスターブ式教会の文様のドアで、別名ドラゴン様式です。下は4つのドラゴンがウロボロスとなりドアの文様に描かれており、教会を守っています。ヴォプナフィヨルズルとはアイスランド北部にあり「武器の湾」という意味である。
上は騎士が竜と戦い囚われている獅子を開放し、獅子とともに騎士が竜と戦い竜退治するというサーガが描かれております。
あれっ?て思う方いますよね。そう、アイスランドの国璽には竜が居て東方を守る守護神だからです。
そう、このサーガ実は北欧独自のものじゃないんです。「イヴァンまたは竜の騎士」というアーサー王伝説の派生を伝えたものなんです。
アイスランド国立博物館に所蔵されております。コペンハーゲンにあったものを19世紀に返還されました。
それどころかアイスランドの国璽にいる竜はノルウエー・サーガと言って石の巨人やグリフォンと一緒にアイスランドを守るために戦ったドラゴンです。そしてその舞台はあろうことかヴォプナフィヨルズルなのです。竜は侵略者の進撃を食い止めるためにヴォプナフィヨルズルで戦ったのです。
ですので、この文様は矛盾してるのです。
Here be dragons (ここにドラゴンが居る)と言う意味
Here be dragons
これは、「ここにドラゴンが居る」と言う意味で中世ヨーロッパ人にとって未知の海域で海魔がいるという意味です。要は「ここは人類未踏の地で魔物が居るから近づくな」って意味なのです。だから大航海時代までは海図に竜が描かれていました。
「Here be dragons」は何も悪い意味だけではなく冒険者にとってあこがれの地で「人類未踏の地を俺が制覇する」という冒険者(特に海賊)の憧れの地だったのです。そして竜とは高確率で荒れ狂う波や強大な天候特に台風・ハリケーン・サイクロンを意味していました。海賊と言っても国から状をもらって他国の船を荒らしまくてっもよいという免許状をもらった船で敵にとっては悪魔のような存在でも母国では英雄です。海の勇者たちは、特に海賊は竜のいる海を目指していたのです。
「ここにドラゴンが居る」というちょっと間が抜けた訳語では通らないのか日本では知名度が相当低いです。ですが英米では歌のタイトルにしばしばなるほどの語です。
ルジュビ と言う竜について
ルジュビとはアルバニア神話に登場する竜でアルバニア版ヒドラと言って問題ない。クルシェドラにも似るというが私は違うと思う。なぜならルジュビはリリスのような悪魔ともされ、つまり夢魔にも化けるからである。ルジュビは素晴らしい菜園に住むという。ルジュビは処女を生贄に捧げないと暴れるという。待て、こいつは女の夢魔だぞ。なのに女の処女を要求するのか?百合的展開だな。
ルジュビは1つの頭が切り落とされても別の頭がどんどん成長していくという。
アルバニアは欧州で唯一と言っていいほどのイスラム国家である。イスラムとギリシャの文化が融合したのだろうが女が女を要求するヒドラ的多頭竜と言うのは非常に興味深い。女性に化けて夢魔として男の性欲を求めるという部分にも興味がある。
ルジュビが退治されたという伝承が今のところ見当たらない。
参考文献
Lurker, Manfred (2005).The Routledge Dictionary of Gods and Goddesses, Devils and Demons
マラクと言う竜について
スペインの竜「マラク」について少し研究したい。
このマラクという竜は5世紀にリディーダ族のトーテムとして信仰されていたようだ。5世紀と言うからもうキリスト教信仰と融合していた。
イレルゲテス族にとって、インディビル神が最高神としてその最高神の父親が竜であるマラコということになる。
これって極めて重要ではないですか。ウエールズの赤竜やアイスランドの竜信仰だけでなくバリバリのカトリック圏であるスペインにおいても竜信仰があったことになる。これは大きい。ウエールズもスペインもカトリック圏である。竜信仰はカトリックに側に親和性があるという証拠にもなる。
なお、ロ・マラコはよく山車として中世以降のお祭りに出て被昇天の行列に出席する。
参考文献
Curcó i Pueyo, Jordi. Lo Marraco i els gegants de Lleida i comarques. Ed. Ribera i Rius. Lleida 1996